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【本】文化系トークラジオ Life のやり方

Life のやり方」を読みました。TBSラジオの月末の日曜深夜、月に1回の3時間の生放送のこの番組を、僕は楽しみでよく聴いています。この番組は、僕より一回りほど上の世代の社会学者・ジャーナリスト・編集者・ライターなどが出演する番組です。この番組への出演をきっかけに、メディアでの仕事の幅を増やした人は少なくありません。

多くの人がこの番組には関わっていますが、ビギナー向けに2人だけ挙げると、津田大介さん(@tsuda)、古市憲寿さん(@poe1985)などが挙げられます。特に津田さんは『Twitter社会論』(2009)で注目を集める前からの出演者で、もちろんこの番組がなかったとしても注目を集めた奇才の人であると思いますが、津田さんの才能に早くから気づいていた番組ということは間違いなく、先を読む力が番組にはあったということでしょう。

Life パーソナリティ一覧
http://www.tbsradio.jp/life/personality.html

Lifeの首謀者であるTBSラジオのプロデューサー、長谷川裕さん(番組内での通称:黒幕)による何か新しいものが生まれる前のようなワクワク感を記した第1章、震災直後の異様な熱気に包まれた放送回の書き起こしを含む、ここ1,2年の名場面を活字で読む第2章、この番組のメインパーソナリティであり、関西学院大学の准教授である鈴木謙介さん(番組内での通称:チャーリー)の番組の種明かし的なインタビューの第3章、そして4章には出演者のリスト。

憎い演出が、“はじめに”を斎藤哲也さん、“あとがき”を速水健朗さんのお二人が務めているところだ。この2人とメインパーソナリティ、黒幕との関係性は本書を読んでいただくとして、この本はメインパーソナリティのチャーリーが持つ、二面性というか、多様性というか、網羅性とでも言うか、そういうものを内包した本であることは間違いないだろう。

この本のなかで僕がもっとも感銘を受けたのは、黒幕による第1章だ。この番組は、例えば「紅白歌合戦」のような誰もが知るポピュラーな番組にはならなかったが、ある地点では確実に世代交代を起こしたきっかけを作った番組だと思うし、そういう意味で世の中をちょっとだけ動かした番組であるのだろう。だけど、そういう大きな力は、それほど異能ではない一人によってはじまる。

「ブログを読んで気になったから」と言って後のメインパーソナリティとなる社会学者・チャーリーに会いに行ったり、mixiのコミュニティに書き込んだりしていたり、下北沢の居酒屋で打ち合わせをしたりして番組を作っていく話は、僕たちの日常そのものである。何か新しいことをはじめる場合、どこにでもある話をどこにでもあるように書いた第1章には、凡人の僕らが何か新しいことをはじめる際の参考になるし、僕らにでも何かできると思わせるものがある。

ちなみに、この番組にはこの本以外にかつて一度だけ本を出したことがあった。

文化系トークラジオLife(2007)

こちらもアツイトークが展開されているのでチェックしてみてください。

4月から、Lifeは隔月放送になる。どんな変化が訪れるのか、僕はこの耳でちゃんと聴いていたい。番組の発祥の地ともなった居酒屋「にしんば」があった下北沢は、駅が地下化した。春はいろんな別れと出会いがある。どうせなら、別れを惜しみながら、それ以上大きな出会いに期待したい。期待する方に賭けたい。

 

【本】金益見「ラブホテル進化論」

★★★★★★★☆(7.5点/★は10点満点)

ラブホテルから見えたのは日本の戦後史だった

仕事で中国の若い女性をターゲットにしたmomokoというサイトの編集を担当しておりますが、そこで日本のラブホテルを「japanese pop culture」として紹介することになりました。

それで、日本のラブホテルの当代きっての研究者である金益見さんに電話取材をすることになりました(金さんは関西在住で、上京のタイミングの予定が合わず)。予想通り、都筑響一さんの作品が好きだったり、僕の著書に興味を持ってくれたりと、じっくりお話ししたい人でした。電話取材になってしまったのが残念。

取材を終えてから、金益見さんの著書「ラブホテル進化論 (文春新書)
」を読んだ。

想像以上に面白い本だったので、ここで紹介しようと思いました。このホテルはラブホテルについて皆が抱く“ラブホテルっぽさ”の正体をつまびやかに解説し、ラブホテルの起源から現在、未来にいたるまでのラブホテルの歴史が網羅されている。

この本の面白いところはラブホテルの歴史を振り返ることで、日本が戦後60余年あまり置かれた社会情勢を垣間見れるところにある。

  • ラブホテルに見る日本の住宅事情の変化

日本独自のカルチャーとしてのラブホテルが誕生したのは、日本の住宅事情が大きく反映されている。戦後まもなく、連れ込み宿(ラブホテルの原型)が流行ったのは、風呂があったことである。銭湯しかなかった時代、個室の部屋と風呂を用意したラブホテルは大変賑わった。その後のラブホテルの進化は、日本の住宅事情のニーズに合わせ変化していっているのが分かる。ラブホテルの歴史を考察することは日本の住宅事情の歴史を考えることである。

  •  ラブホテルから見るジェンダー史

ラブホテルが、“男性主体の連れ込み宿”から、“女性が心地よいと思える空間を演出する装置”に進化していく過程は、男女のジェンダーに対する意識が戦後どのように変わっていったかを表しているように見える。ラブホテルの歴史を考察することは日本の男女の役割の変化を考えることである。

  •   ラブホテルから見るモータリゼーション

最初は、東京で言えば新宿の先の新大久保などに集中した連れ込み宿だが、1970~1980年代のモータリゼーションを経て、郊外、特に高速インターにラブホテルが集中していく。これは、人々の交通手段が電車やバスなどの公共交通機関から自家用車に変わったことに呼応する。ラブホテルの歴史を考察することは日本のモータリゼーションの変化を考えることである。

  •   サービスの主体が“もの”から“精神”に頼る社会への変容

都会から郊外へ。日本津々浦々へと広がるラブホテルの時代はバブル時代にいったんのピークを迎える。 このころまでのラブホテルと言えば、最初の連れ込み宿が風呂を売りにしたように、大型テレビ、ゲームやカラオケなど、当時の最先端グッズが集客を担っていた。また、いわゆるアダルトグッズなども、高度経済成長期からバブルにかけては様々なものが求められたが、バブル崩壊以降、次第に人々はホテルに最新機器を求めないようになり、代わりに“癒される空間”などが売りになってくる。これは日本人が物質的な豊かさを求める時代から、精神やサービスなど抽象的な豊かさを求める時代になってきたことと呼応する。ラブホテルの歴史を考察することは日本の物質文化の歴史を考えることである。

  •   「性」に関する意識の変容

ラブホテルが、週刊誌のセックス特集ではなく、一般情報誌で取り扱われるようになったのは1994年の「ぴあ関西版」が最初である(本書P177)。その頃から、ラブホテルは目を背ける対象ではなく、積極的に楽しむ場所となるのかもしれない。ラブホテルの歴史は性に関する意識の変化の歴史である。

このように、ラブホテルの歴史を振り返ることは、日本の歴史を考えることである。そういう意味で本書は、ラーメンの歴史を振り返ることで、日本の戦後史を描こうとした速水健朗さんの「ラーメンと愛国」と同じ構造を持っている本です。ところどころ笑えるところもある簡単に読める本です。同じ金さんの「性愛空間の文化史」も購入したので読み終わったら書評を書きたいと思います。